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特別企画 クリニックの増患・増収を考える

chapter2.歯科医院をどこに開業すべきか

今月は歯科医院の開業地選定について、お話を伺ってまいります。どうぞ宜しくお願いします。

 宜しくお願いします。
まず、第一に申し上げたいのはビル診の場合、2階以上を選んではいけないということです。1階でないといけません。確かに2階以上の物件は1階に比べて、家賃が安いというメリットがあります。その家賃メリットがありながらなぜコンビニエンスストアや大手不動産紹介会社が2階で開設しないかということです。

1階のメリットはどんなところにあるのでしょうか。

 第一に認知度を高めることができるということ、第二に隣りや近くに競合を作らせないことです。自分の歯科医院がディフェンダーの立場になったときに、競合相手が隣の1階に作ってしまったら負けてしまいます。同じビルの一階であれば、なおのこと勝ち目はないでしょう。
したがって、人通りの多い通りの一階の路面店がベストです。

住宅街か、ビジネス街かで迷われる先生方も多いようですが。

 住宅街、ビジネス街、それからターミナル駅周辺など、それぞれ場所によって顧客特性は異なります。
ただし、ビジネス街は集客性を上げるのが難しいんです。ビジネス街の場合は朝の出勤前、昼休み、夕方の退勤後の人しか来ません。 私がかつて銀行員だったときに当時の支店長に「歯医者に行きたい」と言ったところ、「じゃ、銀行を辞めろ。そしたら好きな時間に行けるぞ」と言われたものです(笑)。
 そんな自分の経験から、私は仕事をしている方が通えるような夜10時まで診療する便利な歯科医院を開業したくて歯科医師を目指したのです。 夜10時までの診療は居住ゾーンだからこそ意味があるのであって、ビジネス街では患者さんに何の利便性も生みませんよね。

ビジネス街に勤めている方が帰宅するのは住宅街ですものね。

 住宅街で10時まで診察して、帰宅後のビジネスマンを狙うべきではないでしょうか。魚がいないところでいくら釣り糸を垂らしても魚が釣れるはずはありません(笑)。やはり人口の動きを常に頭に入れておかなくてはいけません。  ビジネス街では働く人たちの通院時間が昔より限られていますので、むしろコストが高くなってしまうんです。
銀行でも都心部では法人相手にならざるをえず、個人預金の獲得は難しいです。丸の内に地銀や信金の支店がないのは各自のビジネスモデルが成り立たないからなんですね。
丸の内ですと歯科医院でも他の事業所並みの大きさがないと難しいですし、銀座だとしても保険診療のみだとリスクが高いのではないでしょうか。 歯科医院は大企業相手ではなく個人対象のビジネスを目指す必要があるのではないでしょうか。

住宅街を選ぶ際に見極めなくてはいけないポイントはありますか。

 まずはその場所は定住者が多いのか、転居者が多いのかというポイントです。 江戸川区葛西のとある物件ですが、新築当初は小中学生向けの塾でした。それが高校生向けの塾に変わり、次に整体の診療所に変わり、囲碁センターを経て、今はダンス教室をやっています。
流入者が少ないので、高校生が卒業してしまったら、塾としては成り立たなくなったわけです。
定住者の年齢と一緒に町が変化していった一つの例と言えるのではないでしょうか。 歯科医院も同様です。移住者が少ない場所で開業すると、シェアを獲得してしまえば有利ですが、新しい患者さんの獲得が難しくなります。

ほかにもポイントがあれば、お聞かせください。

 賃貸物件の多いエリアの方が分譲の一戸建住宅やマンションが多いエリアよりも成功している歯科医院が多い気がします。
たとえば関東で例えるならJR総武線沿線よりも京成電鉄沿線の方が賃貸物件が多いのではないでしょうか。
分譲住宅を購入すれば、ボーナスがローンの返済に使われてしまうケースが多いので、可処分所得が少なくなります。これまでは賃貸物件に13万円の家賃を払っていた人が分譲住宅を購入し、毎月15万円のローンを組むとなると、心理的な負担も大きく、高額な商品を買い控えるのではないでしょうか。
市川市に大きなマンション群ができたときに聞いた話ですが、BMWやベンツに乗っていた人たちもマンションの購入とともに高級車を下取りに出して、トヨタのヴィッツを買ったそうなんです。電動自転車もよく売れているようですが、一方で小学校受験の大きな塾が潰れてしまいました。マンションの支払いのために、塾にかかる費用を節約しているのかもしれません。そうなると、このような場所では自費診療は難しくなります。むしろ、ローンを払い終わった、古い住宅街で開業した方が自費診療は増えるでしょう。熟年層の高価なクルージングツアーが増えているのもこういう表れです。

可処分所得が多い場所のほかはどんな地域がお勧めですか。

 デンタルIQが低く、カリエスが多いエリアです。たとえば世田谷区で500人いたら虫歯は1人1本で、歯科医師が治せる歯は500本にしかなりません。
一方、同じ都内であっても別エリアではその数倍はあるかもしれません。
世田谷のような地域はデンタルIQが高く、既に行きつけの歯科医院を持っている人がほとんどですので、新規で開業しても、集客は困難なのではないでしょうか。ストックマーケットですので後々大きく伸びるマーケットでは有りません。

デンタルIQの低い地域はどのようにしたら分かりますか。

 学校の歯科検診で虫歯の多いエリアがデンタルIQの低さを表しています。ただし、そういうエリアはそれなりの患者さんが多いので歯科医師としては大変ですし、タフさが求められます。
 23区の中でも給食費を払わない家庭が半分を占める区もあります。住民の半分が給食費を払わないコンプライアンスレベルの場所で歯科医院を開業するとなると相当な覚悟が必要にはなりますがマーケットはボリュームゾーンです。実はむかし予備校講師の頃数学の実況中継という参考書を出したのですがその時、前田さんという編集長に、先生熱意は分かるけれど、難しくてもボリュームゾーンが買ってくれないとダメだから。と言われました。この言葉が今でも心に残っています。

美味しいゾーンではあるもののリスクがあるということですね。

 私どもでも当然、診療費の不払いリスクはあります。また、他人の保険証を持ってくる人もいるんです。自分の名前や生年月日が書けない外国人もいましたし、他人の生活保護の証明書を持ってきた人もいました。
レントゲンを撮ると、すぐに分かるんですけど(笑)。
私どもではこうしたリスクを回避するマネージャー、並びに医療専門弁護士を用意しています。

モンスターペーシェントの存在やクレーム処理も大変そうです。

 集客の次はクレーム処理のシステムを作ることが必要です。
損害保険会社の医師保険に入ったとしても、損保会社の人は折衝はしてくれません。このような課題の処理能力に慣れた、かつ長けた会社に相談した方がいいのではないでしょうか。

 クレーマーは毎日同じ時間に来たり、毎週同じ曜日に来たりするのです。その時間帯は診療所ががたがたになってしまいます。でも、集客があるということはイコール、クレームがあるということですので、早めの対策が必要になってくるとおもいます。
開業当初の新患のうちの半分がクレーマーだと思って覚悟した方が良いかもしれません。

半分とは多いですね。

 そもそも開業時にお越しになる患者さんは何かあるので新しい歯医者にくるわけです。(笑)。ですからスタート時の患者さんはハードルが高いわけです。クレーマーやうるさい患者さんだと思わず、要求が高い人だと認識すれば良いのです。その方々は話好きなので、うまく乗り切ればほかの患者さんを連れてきてくれますし、歯科医院のファンになってくれます。
その方々は悪気がないときはいい方々なんです。発想の転換かもしれませんが、私はかつてクレーマーだった患者さんから今ではたまにお菓子をいただくようになりました(笑)。

今後はインプラントなどの自費診療はどうなるのでしょうか。

 カナダの歯科医師は続々とタイに移住しています。カナダではほとんどの人がインプラントを終えたそうで、経済的に豊かでない人はインプラントをしませんから、カナダでは仕事がないのです。
ところが、東南アジア諸国の中ではインプラントのニーズが非常に高いんです。 おそらく10年後の日本も同じように歯科が海外に渡るといった傾向になるのではないでしょうか。
既に子供たちは6番や7番の歯は抜歯まで至らずに処置が終わっていることがほとんどですし、ブリーチの対象者数も減っています。矯正患者さんが激増したということも聞きませんね。

それでは、次回はクリニックの認知度を向上させるための取り組みについて、伺います。

1954年に静岡県浜松市に生まれる。1978年に京都大学法学部を卒業後、三井銀行に入社する。1989年に三井銀行を退社し、東京医科歯科大学歯学部に入学する。1996年に東京医科歯科大学歯学部を卒業。1998年に東京都江戸川区小岩にフラワーロード歯科を開業。その後、昭和通り歯科、京成小岩歯科、ひらい南口歯科(江戸川区平井)、イーフラット歯科(江東区亀戸)、西小岩通り歯科(江戸川区西小岩)、ゆうゆうロード歯科(千葉県市川市)、アフタヌーン・デンタル小岩(江戸川区小岩)、アフタヌーン・デンタル五反野(足立区弘道)、アフタヌーン・デンタル東十条(北区東十条)を開業。2009年に11軒目の歯科医院となる5丁目歯科を葛飾区亀有に開業する。
地域や貴院の特性を踏まえ最適な自由診療を提案いたしますので、まずはお気軽にご相談下さい

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