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診療報酬請求事務 指導・監査

Point

指導・監査の基礎知識

健康保険法

 第73条
「保険医療機関は療養の給付に関し,保険医は健康保険の診療に関し,厚生労働大臣の指導を受けなければならない」(要旨)
 第78条
「厚生労働大臣は,療養の給付に関して保険医療機関等に報告,診療録等の提出・提示を命じ,保険医療機関等に出頭を求め診療録等の検査をさせることができる」(要旨)

これらを受けて厚生労働省保険局長通知の「指導大綱」「監査要綱」というかたちで,指導・監査を具体的にどのように実施するかその内容が定められています。

★指導大綱・監査要綱ともに「保険診療の質的向上及び適正化を図ること」を目的としている

保険診療のルールと指導・監査

保険診療を行っていくうえでのルール⇒「保険医療機関及び保険医療養担当規則」

【健康保険法】
第70条 保険医療機関に対し療養の給付を担当する場合のルール
第72条 保険医が保険診療に当たる際のルール
それぞれ別に厚生労働大臣が定めるとしている

この法に基づいて定められた省令が療養担当規則

第76条第2項「療養の給付に要する費用の額は,厚生労働大臣が定めるところにより,算定する」(=診療報酬点数表の告示)

保険診療⇒療養担当規則に則って診療を行い,診療報酬点数表に則って請求

≪指導・監査とはこれらが適正に行われるためのチェックポイント≫
・ルールを周知徹底し,それが守られるように適時に適切な指導を行う。
・ルールが故意に守られていないと疑われた場合には監査が行われる。
⇒指導と監査はまったく異質なもの

近年の指導・監査の返還額

指導・監査により各医療機関に命ぜられた返金総額
年度 返還額
指導によるもの(万円) 監査によるもの(万円) 適時調査によるもの(万円) 合計(万円)
19 235,800 318,908 554,708
20 252,258 113,854 219,136 585,248
21 212,360 91,543 257,138 561,041
22 273,106 161,291 320,000 754,397
23 207,754 63,513 558,133 829,401
24 405,599 175,799 722,491 1,303,890
25 341,903 501,756 617,508 1,461,167
26 413,453 267,397 651,527 1,332,377

保険医療機関等取消、保険指定医登録等取消

保険医療機関等 指定取消(件) 指定取消相当(件)
24年度 25年度 26年度 24年度 25年度 26年度
医科 13 7 7 29 30 8
歯科 13 12 9 9 9 10
調剤 31 1 1 3 0 6
合計 31 1 1 3 0 6
保険医等 登録取消(件) 登録取消相当(件)
24年度 25年度 26年度 24年度 25年度 26年度
医科 10 9 8 2 0 0
歯科 20 16 13 4 0 1
調剤 5 1 8 1 0 0
合計 35 26 29 7 0 1

役員の損害賠償責任とは

指導 監査
選定対象 すべての保健医療機関が対象
(基準に基づき選定)
不正・著しい不当が強く疑われる保健医療機関
法的性格 保健医療機関の協力による行政指導 上記の保健医療機関に対して行政が強制的に行う質問・検査
行政措置 なし あり(注意・戒告・取消処分)
返還金 請求過分について自主返還(原則過去1年分) 請求過分について過去5年分(不正は4割増)
根拠法 健康保険法第73条、国民健康保険法第41条、高齢者の医療の確保に関する法律第66条 健康保険法第78条、国民健康保険法第45条の2、高齢者の医療の確保に関する法律第72条

指導の種類

種類 内容
集団指導 講習会形式で、①新規指定時 ②指定更新時 ③点数改正時など、必要に応じて実施される
集団的個別指導 類型区分別に1件あたりのレセプトが高点数である保健医療機関を対象に、集団部分(講習会形式)と個別部分(個別指導)で行う
個別指導 新規指定等 開業後概ね6か月を経過して行われる。事前に通知される患者のカルテ等を持参する。継承などで開設者・管理者が変更になった場合も対象となる
既指定
保健医療機関
患者や保険者・審査機関からの情報、高点数のほか、前回「再指導」とされた保健医療機関が対象。指導で指摘された事項は過去1年分の自主返還を求められる

集団指導の方法

≪集団指導の対象となる医療機関≫
①新規に指定された医療機関はすべて。おおむね1年以内
②診療報酬の改定時、保険医療機関の指定更新時(6年ごと)、保険医の新規登録時などでは、指導目的・内容に応じて選定。
③臨床研修指定病院や大学病院などの特定共同指導に併せて選定。
≪集団指導対象とされた場合≫
■ 約1ヵ月前に日時・場所・出席者・法的根拠等を記載した文書により通知される。
■ 出席者は指導形態・内容に応じて異なるが、院長等の管理者、勤務医、請求事務担当者などである。
■ 公的施設あるいは医師会館などに一堂に集められた対象者に講演形式で1時間半程度かけて行われる集団指導の内容は、療養担当規則の内容、カルテ・レセプトの記載について、過去の個別指導における指摘事項などである。
■ 過去の指摘事項などの具体的な内容が話された場合は記録にとどめ、実際の診療・請求時に留意する。
(=個別指導への対策)

診療録においての最低限の記録(医師法)

医師法施行規則においては最低この4項目
 診療を受けた者の住所、氏名、性別及び年齢
 病名及び主要症状
 治療方法(処方及び処置)
 診療の年月日
その他
複数医師、薬剤師の運営
 各実施者の指名をフルネームにて診療録に記載

診療録においての最低限の記録(医師保険法)

医療保険法によれば
◆ 患者の基本情報 氏名・年齢・性別・住所・保険証番号等
◆ 主訴(CC; Chief Complaint)
胸痛・発熱といった、患者が来院するきっかけとなった主な訴えであり、診療はここから始まる。
◆ 現病歴(現症)(PI; Present Illnessまたは O.C; onset and course) 
いつから、どのように主訴が始まり、どのような経過をとったのか、前医ではどのような治療を受けたのか、どのような症状が出たのか。
◆ 既往歴(PH; Past History) 
過去に患者がかかった病気。現在の病状の把握や、治療の際の方針に大きく影響する。
◆ 家族歴(FH; Family History) 
親族や同居者の病気・健康状態。遺伝性疾患や感染症等で家族歴が重要となるだけではなく、患者背景を知り適切な治療方針を立てる上での参考になる。
◆ 社会歴(SH; Social History) 
出身地・職業・日常の生活状況・趣味。
◆ 嗜好
喫煙・飲酒等
◆ アレルギー
花粉等のほか、アレルギーを起こす薬剤について
◆ 現症・身体所見
視診・聴診・触診による所見、反射・精神状態等
◆ 検査
血液検査・画像検査等各種の検査結果や予約の状況
※入院診療録
治療方針  入院計画書
 治療の目的について 入院後経過
 看護計画、看護記録
  最終監査は診療録管理士が行い、不適合はフィードバックする