ひとくち税務・経営講座>最新医療経営トピックス:これからの時代を見据えた今後の診療所戦略

これからの時代を見据えた今後の診療所戦略

Point
 厚労省は2025年に焦点を合わせていますが、その先の未来も考えていく必要がある、ということで「保健医療2035提言書」というものがあります。塩崎恭久厚生労働相の私的懇談会がまとめたものです。私的懇談会というものは根拠法令がないので法的な力はありませんが、行政が次にどのようなことを打ち出してくるかを予測する参考資料にはなります。
保健医療2035のキャッチコピーは「2035年、日本は健康先進国へ。」
これまでの医療の量的拡大や行政による規制、設備や人員配置を基準にした報酬評価を中心とした保健医療から、質の改善や当事者による規律、患者にとっての価値を中心とした保健医療へのパラダイムシフトが必要だと指摘しています。

これから20年後の社会と経済の変化に対応するためのパラダイムシフト

これから20年後の社会と経済の変化に対応するためのパラダイムシフト

診療所の戦略策定のポイント

①かかりつけ医のさらなる普及を図る施策が今後も継続すると見込まれ、患者の状態や価値観もふまえて、適切な医療を円滑に受けられるサポート機能を発揮することが求められます。
②専門性のアピールとともに重要となるのは、「かかりつけ医」としての患者とのかかわり方を日常から強めておくようにすることです。
③当面はかかりつけ医機能の評価に直接かかわる疾患が無くても、急性疾患での受診時など地域住民と接する機会は少なくないと思われます。大病院の受診を迷って相談を受けるケースも想定し、「かかりつけ医の診療所」としての関係づくりを日ごろから留意しておくことが必要です。
・地域のニーズに合致した診療日時(夜間・早朝・日祝日)
・信頼できる病院・介護施設・介護事業との連携強化
・ホームページ等の広報ツールの充実
・職員の接遇マナー
・職員の教育・育成
・アンケート調査による患者ニーズの把握
・かかりつけ医機能強化と在宅医療への取り組み
・専門クリニック(地域のやらなければならない医療に合致した専門性)

開業希望地の現状把握

 開業希望地が決定したらその地域のデータの集積・分析を行いましょう。
・医療、介護需要予測
・小学校区・中学校区。市町村、二次医療圏内
・人口(年齢別人口予測、5年後、10年後、15年後、20年後)
・医療機関(規模、病床、届出内容)
・介護事業所及び介護施設、有料老人ホーム、サ高住等
これから20年後の社会と経済の変化に対応するためのパラダイムシフト
・この先、継続して患者数が見込めるのか。
・開業希望地周辺のどこに医療機関、施設があるのか?だけではなく、その医療機関、施設はどのような機能をもっていて今後どんな役割を担うのか?
・どの医療機関・介護事業所・施設と連携していけばよいのか?
【これからの診療所において求められること】
①地域における自院のポジショニングを明確にする(マーケティング)
②自院にとっての連携先
③地域・利用者から安心され、信頼される診療所であり続けることを全スタッフが認識していること
④人材情報管理と評価方法の確立・スタッフの資格・受講した研修・今後の希望等人事労務管理のあり方
⑤採用計画・研修は必要な経営戦略であることを認識すること
⑥診療所内連係・法人内連係・組織力・地域力が重要

開業コンセプトと経営理念

基本理念として、院長先生が何をしたいのか?そのためにどのような医療を提供していくのか?を考えてみましょう。
やりたい医療 理念・基本方針(方向性)
夢・希望
やれる医療 現状の施設機能
現状の経営状況
やりたくない医療 理念・基本方針(方向性)からの逸脱
不得意分野
やれない医療 機能範疇外
提供資源(人材・機器設備・資金)不足
やらなくてはならない医療 今後の地域のニーズ(地域包括と患者の医師)
今後の政策の動向(機能分化等)
地域のニーズを把握し、どのようなポジショニングを目指すのかをこれまで以上に明確にして行く必要があるでしょう。
また、開業後も自院の患者さんの年齢、住所、生活環境はどうか。他に地域内の医療機関や介護施設等に通っているのか?
自院に来院してくれたきっかけや紹介者などの状況を把握していくことも必要です。