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平成28年度税制改正大綱

Point
平成28年度税制改正大綱の柱は、平成29年4月の消費税率10%引き上げ時に軽減税率制度を導入するほか、成長志向の法人税改革押して、国・地方を通じた現行の32.11%の法人実効税率を平成30年度までに「20%台」にする事を明記しました。
 その一方、財源確保の観点から、建物付属設備や構築物の償却方法を「定額法」に統一する減価償却の見直し、生産性工場設備投資促進税制の期限通りの廃止等による課税ベースの拡大が盛り込まれました。  安倍内閣は「新三本の矢」として「希望を生み出す強い経済」「夢を紡ぐ子育て支援」「安心につながる社会保障」を掲げています。経済の好循環を確実にするために税制面においても企業が収益力を高め、前向きな国内投資や賃上げを積極的に取り組んでいくよう促しています。以下、主要な項目について具体的に説明していきます。

法人税

・法人税率の引き下げ
法人税の税率(現行23.9%)が、以下の通り段階的に引き下げられます。平成25年度の37%からの下げ幅は7%を超えます。
  平成27年度 平成28年度 平成29年度
法人税率 23.90% 23.40% 23.20%
法人実効税率 32.11% 29.97% 29.74%
*国に支払う法人税に加えて、地方自治体に支払う法人事業税や法人住民税も含めたもの

・法人税率の引き下げと地方法人税の引き上げ
 消費税率10%の引き上げによる地域間の財源の偏りを是正し、財政力格差の縮小を図るため、平成29年度から法人住民税の法人税割の標準税率・制限税率が引き下げられます。
 そして、地方法人税の税率はその引き下げた分だけ引き上げられます。
法人住民税 改正前 改正後
標準税率 制限税率 標準税率 制限税率
道府県民税法人税割 3.2% 4.2% 1.0% 2.0%
市町村民税法人税割 9.7% 12.1% 6.0% 8.4%
  改正前 改正後
地方法人税 4.4% 10.3%

・建物付属設備・構築物の償却方法の見直し
 平成28年4月1日以降に取得する「建物付属設備」と「構築物」の償却方法は、定率法が廃止され、定額法に一本化されます。この改正は所得税も同様です。
  改正前 改正後
建物付属設備構築物 定率法or 定額法 定額法

・欠損金の繰越控除制度の見直し
 今回の改正では、所得金額に対する現行の控除限度額の割合が毎年、5%ずつ引き下げられます(大法人)。中小法人は現行通りです。また、欠損金の繰越期間等が平成30年4月1日から10年(現行9年)に延長されます。
 この制度は、法人の特定の期に税務上の欠損金が発生した場合に、その欠損金を繰り越しよく期以降の課税所得と相殺することで税負担を軽減する制度です。
区分 内容 平成26年度 平成27年度 平成28年度 平成29年度 平成30年度
建物付属設備構築物 定率法or 定額法 定額法 定率法or 定額法 定額法 定率法or 定額法 定額法

・租税特別措置法について
 租税特別措置法に規定される制度のうち、機械等を購入したとき一定の税額控除の適用を受けられる制度である「生産性工場設備投資促進税制」は適用期限を持って廃止されてしまいます。しかし、「雇用促進税制」、「交際費等の損金不算入制度」「中小企業者等の少額減価償却資産(30万円未満)の損金算入特例」は適用期限が延長されました。

・企業版ふるさと納税
 青色申告法人が「改正地域再生法の施行日」から「平成32年3月31日」までの間に、地方創生推進寄付活用事業に関連する寄付金を支出した場合、その支出した寄付金の額の合計額の20%を法人住民税額から、10%を法人事業税から控除を可能とする地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)が創設されます。

消費税  *延期になりました

 平成29年4月の消費税率10%引き上げ時に軽減税率制度が導入されます。
導入時期 :平成29年4月1日
軽減税率 :8%(国分6.24%、地方分1.76%)
対象品目 :酒類、外食を除く飲食料品
         定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞
区分経理 :平成33年4月1日からインボイス制度を導入。それまでは簡素な経理方式

所得税

・医療費控除の特例措置(セルフメディケーションの推進)
 適切な健康管理の下で医療用薬品からの代替を進める観点から、健診、予防接種を受けている個人を対象として、スイッチOTC医薬品の購入費用についてセルフメディケーション(自主服薬)推進のための所得控除制度が導入されます。医療費控除といずれか一方のみ受けられます(選択適用)。
対象者   : 自己、事故と生計を一にする配偶者その親族。ただし、健診等又は予防接種を
         受けていることを要件とする。
         「特定健康診査・予防接種・定期健康診断・健康診査・がん検診」
適用時期  : 平成29年1月1日から平成33年12月31日までの各年
控除対象  : スイッチOTC医薬品の購入対価
控除金額  : 「控除対象医薬品の合計額 ― 保険金などの補填される金額 ― 12,000円」
控除限度額: 最大88,000円
・空家にかかる譲渡所得の特別控除の特例の創設
 相続時から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、被相続人の居住用家屋を相続した相続人が、その家屋または除却後の土地を譲渡した場合には、その家屋または除却後の土地の譲渡益から3,000万円を控除することができます。

・住宅の三世代同居改修工事等に係る特例の創設
 個人が自己所有の家屋に三世代同居改修工事等をして、平成28年月1日から平成31年6月30日までの間に居住の用に供した場合、その住宅借入金等を有する場合、一定の要件を満たした場合に税額控除ができます。

・通勤手当の非課税限度額の引上げ
 通勤手当の非課税限度額を現行の月額10万円から15万円に引上げられます。平成28年1月1日以降に受けるべき通勤手当について適用されます。
日本の税制は税金を取りやすい個人に対して税負担を強めています。企業に対しては国際競争力の名の下に減免していきます。個人では社会保険料の負担が増えていき、消費税は10%に増税になり、復興特別所得税(法人税はすでに廃止されました)は2037年まで続きます。今後も個人については増税傾向が続いていくでしょう。