ひとくち税務・経営講座>知っておきたい税務用語:第12回 「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税非課税措置」について

知っておきたい税務用語

第12回

1.制度の概要

この制度は、平成27年1月1日から平成33年12月31日までの間に、住宅の新築や購入、リフォームを行うための資金を父母・祖父母など(直系尊属)から贈与された場合に一定の要件を満たせば、限度額までの金額について、贈与を受けた子や孫など(受贈者)に課せられ贈与税が非課税となる制度です。

2.適用期間の延長

平成28年6月、安部首相が消費税の10%への引き上げを2年半延期することを正式に表明しました。それに伴い「住宅取得等資金の非課税制度」の適用期間も2年半延長され、平成33年12月31日までの贈与について本制度が適用されることになりました。

3.非課税限度額

贈与された住宅用の資産のうち、贈与税が非課税となる限度額は以下の表1.2のとおりです。「家屋の新築や購入などの契約時期」「家屋の種類」「家屋の購入対価などに課せられる消費税率」により非課税限度額が異なるのでご注意ください。
たとえば、平成29年中に親から子へ住宅資産として1,000万円の贈与があった場合、その住宅が「省エネ等住宅」であれば1,200万円が非課税限度額となるため1,000万円全額が非課税となります。省エネ等住宅でない場合は700万円が非課税となり、1,000万円-700万円-110万円(贈与税の基礎控除額)=190万円について贈与税が課されます。
表1(家屋の価格やリフォーム費用に係る消費税率が10%以外の場合
住宅用家屋の取得等の契約締結期間 省エネ等住宅* 左記以外の住宅
平成27年12月31日まで 1,500万円 1,000万円
平成28年1月1日~平成32年3月31まで 1,200万円 700万円
平成32年4月1日~平成33年3月31まで 1,000万円 500万円
平成33年4月1日~平成33年12月31まで 800万円 300万円
表2(家屋の価格やリフォーム費用に係る消費税率が10%の場合
住宅用家屋の取得等の契約締結期間 省エネ等住宅* 左記以外の住宅
平成31年4月1日~平成32年3月31まで 3,000万円 2,500万円
平成32年4月1日~平成33年3月31まで 1,500万円 1,000万円
平成33年4月1日~平成33年12月31まで 1,200万円 700万円
*「省エネ等住宅」・・・省エネ基準や耐震基準またはバリアフリー住宅であることについて一定の証明がなされたものをいいます。

4.適用要件

本年度の適用を受けられる受贈者(子や孫など)や家屋には以下のような要件があります。
「受贈者」・・・以下①~④をすべて満たした者
①贈与時に日本国内に住所がある(住所が国外でも適用可能な場合あり)。
②贈与時に贈与者の直系卑属(子や孫など)であること。なお、子や孫の配偶者は適用されません。
③贈与を受けた年の1月1日において20歳以上であること。
④贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であること。
「家屋」
家屋の床面積が50m²~240²であること。
中古住宅の場合、築年数20年以内(耐火建築物の場合は25年以内)
リフォームの場合、工事費用が100万円以上であること。
そのほかに、耐震基準についての要件などがあります。

5.注意点

・資金の贈与を受けた年の翌年3月15日までに家屋の取得などを行い、その家屋に居住すること(または居住することが確実であること)が条件・・・贈与する前に建築期間や家屋の引き渡し時期を確認しておく必要があります。
・不動産の贈与は適用外・・・本制度「金銭の贈与」を受けた場合に限られていますので、居住用の土地や家屋を贈与された場合には非課税となりません。
・贈与する人が複数いた場合でも非課税限度額は同じ・・・受贈者1人について非課税限度額が定められています。たとえば父と母2人からそれぞれ住宅取得等資金の贈与を受けた場合でも、父1人から贈与を受けた場合でも、受贈者である子が適用できる非課税限度額はかわりません。
・個人間の売買(中古住宅の取得など)の場合、消費税10%の場合の非課税限度額(上記の表2)は適用できない・・・事業として行われていない個人間の売買には消費税等が課せられないため、上記の表1の金額が適用されます。
またこの制度を適用するには贈与税の申告が必要となります。たとえ贈与された住宅資金のすべてが非課税となる場合でも、一定の書類(戸籍謄本、登記事項証明書など)を添付して申告する必要があります。

6.まとめ

適用要件や申告方法など、複雑なように思える本制度ですが、この制度によって非課税となった金額は相続時にも相続税が課税されないというメリットがあります。
また、平成27年1月1日~平成31年3月31日までに契約した住宅について上記表1の非課税限度額を利用した場合でも、消費税が10%になった後に契約した住宅について上記表2の非課税限度額を利用することができます。つまり、消費税の増税前後でこの制度を2回利用することが可能です。
例:平成29年中に中古住宅(省エネ等住宅以外)を購入し、平成31年10月に消費税10%でその住宅のリフォームを行った場合
平成29年・・・贈与された資金のうち、表1の限度額である700万円が非課税となります。
平成31年・・・贈与された資金のうち、表2の限度額である2,500万円が非課税となります。
このように、住宅の購入とリフォームの時期をわけることで多額の非課税措置を受けることも可能です。