ひとくち税務・経営講座>知っておきたい税務用語:第7回 税務上の届出~開業時~

知っておきたい税務用語

第7回

税務上の届出~開業時~

開業時の税務上の届出

  開業に当たっては、諸官庁に対して様々な届出を行う必要があります。ここでは、特に税務上必要な届け出についてご説明します。
 これらの中には、提出が法律で義務付けられているものと、任意で税法上の特典をうけるために提出するものがあります。各届出には提出期限があり、期限を過ぎてしまうと開業年から適用することができなくなってしまうので、注意が必要です。

開業届(個人事業の開廃業等届出書)

 新たに事業を開始したことを届け出ます。事業所と自宅の管轄税務署が別の場合、納税地を選択できます。
 事業を開始した日から1カ月以内に納税地の所轄税務署長に提出します。

給与支払事務所等の開設届出書

 給与の支払い事務を取り扱う事務所等を開設したことを届け出ます。給与を支払う際に所得税を源泉徴収することが義務付けられているためです。届出を行うと、必要書類が一式送られてきます。税務署へ提出する書類や源泉所得税の納付方法、年度末の処理など細かい規定があります。
 事務所を開設した日から1カ月以内に所在地の税務署長に提出します。

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

 源泉所得税は、原則として給与を支払った翌月10日に納付しなければならず、毎月納付義務が発生することになります。しかし、給与の支給人員が常時9人以下であれば、納期の特例の承認申請を行う事で半年に1度の年2回(7月10日・翌年1月20日)にまとめて納付することが出来るようになります。
 提出時期は特に定められていませんが、原則として、提出した月の翌月以降からの適用となります。

青色申告承認申請書

 青色申告をするためには、申請を行って初めて認められます。所得税法の規定では「業務につき帳簿を備え付けてその取引を記録し、かつ、その帳簿書類を保存しなければならない」とあります。このような帳簿書類の備付けや保存、明細書の添付などの条件が求められますが、様々な特典があります。
青色申告のメリット(例)
①最高65万円の特別控除
②赤字の場合、3年間繰り越すことが出来る
③家族への給与を支払う場合、他従業員と比較して適正な給与を必要経費にできる。
④30万円未満の減価償却資産は一括経費にできる(年300万円まで)
など

青色事業専従者給与に関する届出書

 配偶者等の生活を一にする親族に給与を支払う場合には、事前に届出をしなければ経費にすることが出来ません。この適用をうけるためには、青色専従者の氏名、その職務内容及び給与の金額並びにその給与の支給期その他一定の事項を記載した届出書を納税地の所轄税務署長に提出します。給与は届け出た金額の範囲内しか経費にならないので注意が必要です。
 届出書の提出期限は、青色事業専従者給与額を必要経費に算入しようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後開業した場合や新たに事業専従者を有することとなった場合には、その日から2か月以内)です。

消費税課税事業者選択届出書

 事業を開始したばかりの個人事業者は、原則として消費税の免税事業者となっています。その後も、課税売上高が1,000万円以下で推移すれば、消費税の納税義務は免除されたままです。
 この届出書は、そもそも消費税の課税事業者でない者が、自らすすんで消費税の課税事業者を選択する、つまり申告も納税(あるいは還付)も積極的に受けたい場合に提出する書類となります。
 あえて選択する理由は、多額の控除税額がある場合に還付を受けるためです。適用しようとする課税期間の開始前日までに納税地を所轄する税務署長届出書を提出します。なお、課税事業者を選ぶと、最低2年間は継続して適用する必要があります。
 提出した日の属する課税期間の翌課税期間からこの届出書の効力が生じます。
 事業を開始した日の属する課税期間から消費税簡易課税制度選択届出書又は消費税課税事業者選択届出書に係る制度を選択する場合には、これらの届出書をその事業を開始した日の属する課税期間の終了の日までに提出すれば、その課税期間から選択することができます。
届出をする際には事前に専門家ときちんと打合せるのが得策です。特に不動産収入がある場合は早めに相談しましょう。