ひとくち税務・経営講座>知っておきたい税務用語:第4回 スキャナ保存制度

知っておきたい税務用語

第4回

スキャナ保存制度(平成28年度税制改正の変更点を中心に)

スキャナ保存制度とは・・・

税務上保存すべき帳簿書類に関して、平成17年にスキャナ保存制度が創設され、事前に所轄税務所長等の承認を受ければ、保存すべき帳簿や決算書類等のデータを、一定要件のもとでデータ保存することが出来るようになりました。
しかし、スキャンデータの真正性を担保するために要件が非常に厳しくなっており、導入へのハードルは非常に高いものになっていました。このような中で、平成27年度税制改正において、厳しかった要件が大幅に緩和されましたが、平成28年度税制改正においてもさらに、見直されました。 
 改正後制度は平成28年9月30日以降におけるスキャナ保存制度の承認申請から適用されます。

スキャナ保存制度の緩和内容

(1)27年度税制改正の緩和内容
①27年度の税制改正により、スキャナ保存の対象となる国税関係書類の範囲が拡充されました。
国税関係書類の種類 改正前 改正後
決算関係書類・帳簿 × ×
契約書および領収書(金額3万円未満)
契約書および領収書(金額3万円以上) ×
上記以外の書類
②27年度の税制改正により、電子署名が不要になりました。
 スキャナで読み取る際に、必要とされていた入力者等の電子署名を不要とし、簡易的な措置として、入力者等の情報を確認できることが要件となりました。
 タイムスタンプを付すことは従来通り必要です。タイムスタンプに関しては28年度改正に追加事項があります。
タイムスタンプとは、タイムスタンプに刻印されている時刻以前にその電子文書が存在していたこと(存在証明)、その時刻以降、当該文書が改ざんされていない事(非改ざん証明)をするものです。
③「適正事務処理要件」の追加 (平成28年度税制改正で緩和されました(後述))
「適正事務処理要件」
・相互けんせい・・・・・ 各事務に関する職責をそれぞれ別の者にさせるなど、明確な事務分掌の下に相互にけんせいが機能する事務処理の体制がとられていることが必要。
・定期検査・・・・・・・・ 事務処理手続きの定期的な(最低限1年に1回以上)検査を行う体制が必要。
・再発防止策・・・・・・ 検査等を通じて問題点が把握された場合に、経営者を含む幹部に不備の内容が速やかに報告されるとともに、原因究明や改善策の検討、必要に応じて手続規程等の見直しがなされる体制が必要。
これらの規定を定め、これに基づき当該各事務を処理することが必要となりました。
(2)平成28年度税制改正の緩和内容
①スキャンする際に用いる装置について、「固定型」という要件を廃止
デジタルカメラやスマートフォンによる撮影が可能になりました。

②国税関係書類の受領後、書類に署名をして、3日以内にタイムスタンプを付すことになりました。

③適正事務処理要件のうち、相互けん制要件及び定期検査要件の緩和
・相互けん制要件の緩和・・・・ 国税関係書類の受領者以外の者が記録事項の確認を行えば良い。
(必要に応じて原本の提出を求める場合あり)
・定期検査要件の緩和・・・・・ 定期検査が完了するまで必要な原本保存を本店以外の各支店・事業所で行っても良い。
・小規模事業者は、定期検査を顧問税理士等に依頼すれば、相互けん制を行わなくても良い。
(*小規模事業者:中小企業基本法により、サービス業にあたっては従業員5人以下の企業)
現行の手続:固定型のスキャナであるため、社内において領収書等を記録
改正事項の概要
改正事項の概要
大幅に緩和され、以前より使いやすくなったスキャナ保存制度ですが、まだハードルはあります。
タイムスタンプを発行する認定事業者に対する費用(システム導入費用や運営費用等)の問題や電子データの管理体制の規程等の整備など、特に個人事業者では簡単に導入というわけにはまだいかないのが現状ではないかと思われます。