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第十回医師の働き方改革と労働契約期間

平成30年2月27日、医師の働き方改革に関する検討会において、「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」が発表されました。その内容には、現行の労働法制により当然求められる事項も含まれており、これまで、医療において医師の労働に関しては聖域とされてきたことを示しているともいえます。引き続き、時間外労働の上限設定などを検討会において議論中であり、平成31年3月末までに結論が示される予定です。

平成30年4月18日に四病院団体協議会が加藤勝信厚生労働大臣宛てに提出した要望書には、「医師の労働の特殊性を明確にした上で、現行の労働法制とは異なる独自の医師労働法制を制定することを要望する」と明記され、特に、初期臨床研修医や専攻医としての研修期間は、医師としての研鑽を積む重要な期間であることから、「この期間を労働法制から除外し、労働時間を総合的・横断的に検証するための医療界が自主的に運営するシステムの検討を要望する」とありました。(出典:一般社団法人 日本病院会ホームページ)

臨床研修の間は2年間の有期契約職員とされていることも多いようです。今回は労働契約の契約期間について取り上げます。

労働契約の期間

労働契約について、契約期間を定めるか定めないかという点に関しては、自由です。

期間の定めのない労働契約(無期労働契約)を締結する場合、一般的には定年までが契約期間になります。

期間を定める場合(有期労働契約)には、労働基準法14条により、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、原則3年を超えてはならないという制限があります。特別の例外として特定の業務に就く者を雇い入れる場合や、満60歳以上の者を雇い入れる場合、上限は5年となります。

なお、期間の下限については定められていません。

5年までの契約が認められる高度の専門的知識等を
有する者として厚生労働大臣が定める基準
1 博士の学位を有する者
2 次のいずれかの資格を有する者
① 公認会計士
② 医師
③ 歯科医師
④ 獣医師
⑤ 弁護士
⑥ 一級建築士
⑦ 税理士
⑧ 薬剤師
⑨ 社会保険労務士
⑩ 不動産鑑定士
⑪ 技術士又は弁理士
3 次のいずれかの能力評価試験の合格者
① ITストラテジスト資格試験合格者
② システムアナリスト資格試験合格者
③ アクチュアリーに関する資格試験合格者
4 次のいずれかに該当する者
① 特許法上の特許発明の発明者
② 意匠法上の登録意匠の創作者
③ 種苗法上の登録品種の育成者
5
  1. (1)一定の学歴及び実務経験を有する
    次の者で年収が年収が1075万円以上の者
  2. (2)システムエンジニアとして5年以上の
    実務経験を有するシステムコンサルタントで、
    年収が1075万円以上の者
学歴 実務経験
大学卒5年以上
短大・高専卒6年以上
高卒7年以上
6 国等によりその有する知識、技術、
経験が優れたものであると認定されている者

◆ 有期労働契約の契約期間についての配慮

契約期間の下限についての定めはありませんが、使用者は、有期労働契約によって労働者を雇い入れる場合は、その目的に照らして、契約期間を必要以上に細切れにしないよう配慮しなければなりません。(労働契約法17条2項)

厚生労働省発行の「労働契約法のあらまし」において、この規定の趣旨が次のように説明されています。

「有期労働契約については、短期間の契約が反復更新された後に雇止めされることによる紛争がみられるところですが、短期間の有期労働契約を反復更新するのではなく、当初からその有期契約労働者を使用しようとする期間を契約期間とする等により全体として契約期間が長期化することは、雇止めに関する紛争の端緒となる契約更新の回数そのものを減少させ、紛争の防止に資するものです。」

◆ 期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止

使用者は、有期契約労働者と無期契約労働者との間において、期間の定めがあるかないかという理由で、賃金・労働時間のみならず、災害補償・服務規律・教育訓練・付随義務・福利厚生等の労働条件について不合理な相違を設けてはなりません。(労働契約法20条)

厚生労働省発行の「労働契約法のあらまし」において、この規定の趣旨が次のように説明されています。

「有期契約労働者については、期間の定めのない労働契約を締結している労働者と比較して、雇止めの不安があることによって合理的な労働条件の決定が行われにくいことや、処遇に対する不満が多く指摘されていることを踏まえ、有期労働契約の労働条件を設定する際のルールを法律上明確化する必要があります。このため、有期契約労働者の労働条件と無期契約労働者の労働条件が相違する場合において、期間の定めがあることによる不合理な労働条件を禁止するものとしたものです。」

有期労働契約の締結、更新及び雇止め

有期労働契約については、契約更新の繰り返しにより、一定期間雇用を継続したにもかかわらず、突然、契約更新をせずに期間満了をもって退職させる等、いわゆる「雇止め」をめぐるトラブルが大きな問題となっていたことから、次の通り、基準が定められています。

かつては通達の形で指針が示されていましたが、労基法14条2項が改正されて有期労働契約の期間が大幅に緩和されたのにともない、その内容が告示に格上げされました(「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」平15厚労省告示357号、平成20年3月1日一部改正)。

有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準
契約締結時の明示事項 (1)使用者は、有期契約労働者に対して、契約の締結時にその契約の更新の有無を明示しなければなりません。
(2)使用者が、有期労働契約を更新する場合があると明示したときは、労働者に対して、契約を更新する場合又はしない場合の判断の基準を明示しなければなりません。
(3)使用者は、有期労働契約の締結後に(1)又は(2)について変更する場合には、労働者に対して、速やかにその内容を明示しなければなりません。
雇止めの予告 使用者は、有期労働契約(有期労働契約が3回以上更新されているか、1年を超えて継続して雇用されている労働者に限ります。なお、あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除きます。)を更新しない場合には、少なくとも契約の期間が満了する日の30日前までに、その予告をしなければなりません。
3 雇止めの理由の明示 使用者は、雇止めの予告後に労働者が雇止めの理由について証明書を請求した場合は、遅滞なくこれを交付しなければなりません。
また、雇止めの後に労働者から請求された場合も同様です。
4 契約期間についての配慮 使用者は、契約を1回以上更新し、かつ、1年を超えて継続して雇用している有期契約労働者との契約を更新しようとする場合は、契約の実態及びその労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めなければなりません。

◆ 雇止め法理

有期労働契約は契約期間の満了によって原則としては終了します。しかし、契約が反復更新された後に雇止めされてしまうと、有期契約労働者は不安定な地位におかれることになります。これは、労働者保護の観点からは問題です。このため、判例では、雇止めの拒否について解雇権濫用法理を類推適用するという法理を形成してきました。平成24年、労働契約法19 条によって、一定の場合に雇止めを認めず、有期労働契約が締結又は更新されたものとみなすこととして明文化されました。

無期転換ルール

有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときに、労働者の申し込みによって企業などの使用者が無期労働契約に転換しなければならないルールです。

無期転換申込権の発生後、働く方が使用者に対して無期転換する旨を申し出た場合、無期労働契約が成立します。

※出典 厚生労働省パンフレットより

なお、無期転換ルールを避けることを目的として、無期転換申込権が発生する前に雇止めをすることは、労働契約法の趣旨に照らして望ましいものではありません。また、有期契約の満了前に使用者が更新年限や更新回数の上限などを一方的に設けたとしても、雇止めをすることは許されない場合もありますので、慎重な対応が必要です。