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成功する医療経営のアドバイス

第一回医療分野における「働き方改革」

医療従事者の勤務環境の改善について

日本の総人口は2008年の1億2808万人をピークに減少し始めました。同時に高齢化も加速し、団塊世代が75歳以上となる2025年には高齢患者が激増し、医療費は現在の1.5倍、介護費は2.4倍になると言われています。

一方、若い世代では職業意識の変化が顕著に現れてきており、経済的利益を追求せず、楽しく仕事をすることを第一に考える傾向があります。
このような少子高齢化や職業意識の変化に加え、医療ニーズの多様化などを背景として医療機関における人材確保が困難な中、医療提供体制を維持するためには、勤務環境の改善を通じ、医療従事者が健康で安心して働くことができる環境を整備することがますます重要となってきています。

平成26年10月1日には医療機関の勤務環境改善に関する改正医療法の規定が施行され、各医療機関がPDCAサイクルを活用して計画的に勤務環境改善に取り組む仕組み(勤務環境改善マネジメントシステム)が導入されました。

医療勤務環境改善の意義

医療の質の向上もさることながら、医療機関の経営安定化の観点からも、医療分野の「雇用の質」を向上させていくことが重要であるとして、国における取り組みは始まりました。「雇用の質」とは、①適切な労務管理②職員の健康支援③働きやすい環境整備④働きがいの向上などがポイントになるとされています。

そのためには、まず、各医療機関において、院長等のトップが、勤務環境改善問題を確認するとともに、人事・労務管理上の課題を解決するよう、方針を定めることからスタートします。小さな改善からでも、自機関の目指す姿(ミッション・ビジョン)に近づくよう取り組みを進めていくことが、重要です。

つまり、働き方の問題を他人事ではなく自分たちの事と捉え、関心の目を向けるところに意義があるといえます。

最近の動き

厚生労働省は、医師の「働き方改革」に向けた検討会の初会合を8月2日に開催し、医師の働き方の見直しについて議論しました。
この検討会は、政府が進める長時間労働の是正の一環として開かれるもので、医師の労働時間短縮策と時間外労働の規制のあり方などを議論し、年明けごろに中間取りまとめを公表する方針とされています。

政府が3月にまとめた「働き方改革実行計画」では、罰則付きの時間外労働規制を設ける法律の施行から5年後をめどに、医師の労働時間を規制の対象にするとしました。

最近の裁判例を見ても、神奈川県の医療法人立病院を解雇された医師が、年俸1700万円に時間外労働と深夜労働の割増賃金が含まれていないとして支払いを求めていた裁判で、最高裁判所第二小法廷(小貫芳信裁判長)は平成29年7月7日、医師の請求を棄却した一審、二審の判決を破棄し、東京高等裁判所に審理を差し戻す決定を下しました。

医師についても労働法規を厳格に適用する傾向にある中で、医師法に基づく応召義務との関連がどうなるのかという問題もあり、今後の議論に着目しておきたいところです。