成功する医療経営のアドバイスTOP > 第四回 医師の働き方改革と名ばかり管理職

成功する医療経営のアドバイス

第四回医師の働き方改革と名ばかり管理職

前回にも少し触れましたが、医師の労働を過酷なものとしている主な要因に、①宿日直勤務(当直)と②名ばかり管理職が考えられます。

今回は、②名ばかり管理職について解説します。これまで、医師が医局から派遣される際に、「○○部長」「○○科 第△部長」などといった肩書も含めての待遇が求められることが多く行われてきたことと思われます。

院内において「管理職」という肩書を付けたからといって労働基準法上「管理監督者」と認められるわけではありません。

管理監督者の法的位置づけ

管理監督者の根拠は労働基準法41条2号にあります。この規定により、「管理監督者」に該当すれば、労働基準法上の労働時間、休憩、休日に関する規定は適用が除外されます。

管理監督者についての法令
・労働基準法41条
(労働時間等に関する規定の適用除外)
第四一条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者
二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

昭和63年の通達(昭22・9・13発基17号、昭63・3・14基発150号)で、管理監督者について、このような規制の適用除外が認められた趣旨が、次のように説明されています。

「これらの職制上の役付者のうち、労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない、重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にある者に限って管理監督者として法第四十一条による適用除外が認められる趣旨であること。従って、その範囲はその限りに、限定しなければならないものであること。」

しかし、この言葉だけが独り歩きし、企業が「管理職」として位置づけた社員が、労働基準法上の「管理監督者」に該当しないとして、企業に対して未払残業代を請求する事件が後を絶ちません。

最近でも、コナミスポーツクラブ(東京)の元支店長の女性が、権限や裁量のない「名ばかり管理職」だったとして未払い残業代などの支払いを求めた訴訟の判決で、東京地裁は平成29年10月6日、同社に残業代約300万円と労働基準法違反への「制裁金」に当たる付加金90万円の支払いを命じるなど、頻発しています。

管理監督者の該当性を判断するポイント

平成20年1月、日本マクドナルド事件の判決を契機に、行政通達も出され、次のような点から実質的に判断すべきこととなっています。

1 「職務内容、責任と権限」についての判断要素
重要な経営事項の意思決定プロセスにどの程度関与しているのかが問われます。特に、人事権をどの程度有しているのか、部下の労務管理にどの程度関与しているのかといった要素は、裁判例においてかなり重視されています。

2 「勤務態様」についての判断要素
管理監督者は「現実の勤務態様も、労働時間の規制になじまないような立場にある者」であることから、業務遂行に大幅な裁量があるとしても、いつ、どこで、どのような手術を行うべきか、いつ、どの診察室で外来を行うか、などの労務提供の態様が他律的に決定されていれば、管理監督者性が否定されるという事例もあります。

3 「賃金等の待遇」についての判断要素
管理監督者の判断に当たっては、「一般労働者に比し優遇措置が講じられている」などの賃金等で管理監督者にふさわしい待遇になっているかどうかもポイントとなります。
上述の日本マクドナルド事件では、店長と下位の職位の者とで賃金の逆転現象が生じていたことが、管理監督者性を否定された重要な判断要素でもあります。

深夜割増賃金・年次有給休暇の取扱い

管理監督者であっても深夜割増賃金・年次有給休暇の特例はありません
管理監督者であっても、深夜業(22時から翌日5時まで)の割増賃金は支払う必要があります。
また、年次有給休暇も一般労働者と同様に与える必要があります。

医療機関における働き方改革取組状況

平成29年11月10日には、第4回目の「医師の働き方改革に関する検討会」が開かれています。
現場の管理職から、業界に根付く奉仕や過労を美談・苦労話とする文化を少しずつ改善する必要があると思われます。

   出典:第4回医師の働き方改革に関する検討会資料

管理監督者の判断基準に関する通達の内容











(1) 採用 店舗に所属するアルバイト・パート等の採用(人選のみを行う場合も含む。)に関する責任と権限が実質的にない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となる。
(2) 解雇 店舗に所属するアルバイト・パート等の解雇に関する事項が職務内容に含まれておらず、実質的にもこれに関与しない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となる。
(3) 人事考課 人事考課(昇給、昇格、賞与等を決定するため労働者の業務遂行能力、業務成績等を評価することをいう。以下同じ。)の制度がある企業において、その対象となっている部下の人事考課に関する事項が職務内容に含まれておらず、実質的にもこれに関与しない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となる。
(4) 労働時間の管理 店舗における勤務割表の作成又は所定時間外労働の命令を行う責任と権限が実質的にない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となる。
2 




(1) 遅刻、早退等に関する取扱い 遅刻、早退等により減給の制裁、人事考課での負の評価など不利益な取扱いがされる場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となる。ただし、管理監督者であっても過重労働による健康障害防止や深夜業に対する割増賃金の支払の観点から労働時間の把握や管理が行われることから、これらの観点から労働時間の把握や管理を受けている場合については管理監督者性を否定する要素とはならない。
(2) 労働時間に関する裁量 営業時間中は店舗に常駐しなければならない、あるいはアルバイト・パート等の人員が不足する場合にそれらの者の業務に自ら従事しなければならないなどにより長時間労働を余儀なくされている場合のように、実際には労働時間に関する裁量がほとんどないと認められる場合には、管理監督者性を否定する補強要素となる。
(3) 部下の勤務態様との相違 管理監督者としての職務も行うが、会社から配布されたマニュアルに従った業務に従事しているなど労働時間の規制を受ける部下と同様の勤務態様が労働時間の大半を占めている場合には、管理監督者性を否定する補強要素となる。
3 






(1) 基本給、役職手当等の優遇措置 基本給、役職手当等の優遇措置が、実際の労働時間数を勘案した場合に、割増賃金の規定が適用除外となることを考慮すると十分でなく、当該労働者の保護に欠けるおそれがあると認められるときは、管理監督者性を否定する補強要素となる。
(2) 支払われた賃金の総額 一年間に支払われた賃金の総額が、勤続年数、業績、専門職種等の特別の事情がないにもかかわらず、他店舗を含めた当該企業の一般労働者の賃金総額と同程度以下である場合には、管理監督者性を否定する補強要素となる。
(3) 時間単価 実態として長時間労働を余儀なくされた結果、時間単価に換算した賃金額において、店舗に所属するアルバイト・パート等の賃金額に満たない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となる。特に、当該時間単価に換算した賃金額が最低賃金額に満たない場合は、管理監督者性を否定する極めて重要な要素となる。